とある愛のカタチ(男1 女1 兼用1 15分)【演劇脚本】

短編(30分以内)

〈あらすじ〉

お馬鹿な和也、ツンデレの夏美は、今日もとあるファミレスで他愛もない話をしている。他から見ればバカップルかもしれない。でもそこには愛があるんです。そんなお話。

〈登場人物〉

和也 33歳 フリーター 少年の心を持つ

夏美 24歳 会社員 ちょっとツンデレ

店員 真面目に働いている

〈舞台〉

舞台はファミレス。テーブルと椅子2脚

落語でつかうような「めくり」が舞台上にある(無くても良い)

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◆シーン1 かわいいんだよなぁー

   店員、題名をめくる

   シーンのタイトルが書いてある

   和也、夏美、メニューを見ている

和也「なっち決まった?」

夏美「…なんで?」

和也「え、なんでってなんで?」

夏美「理由を言いなさい」

和也「いやー決まったかなーと思って~」

夏美「答えになってないんだよ?」

和也「…」

夏美「どうせあれでしょ?かずくん、自分で決められないから、私のを参考にしようってことでしょ?」

和也「俺は決まってるんだよ、とっくに」

夏美「決まっているんなら、私に聞いてどうするの?だって決まっているってことは、もう変えないってことだよ?」

和也「そうとも限らないよ?」

夏美「え?変えるの?私の注文に左右されて、自分の意思を曲げるの?いやいや、個の主張ってものがないのかねぇ。ヨッ、没個性」

和也「お言葉ですが~、僕はですね、なっちと注文が被ったら変更しようと思って聞いているんですよ~。あれぇ~?それって没個性なんですか~?」

   店員が来る

店員「お決まりですか?」

和也「あ、まだ決まってないんで」

夏美「決まってないのかよばーーか」

店員「…お決まりになりましたら、こちらのボタンでお呼びください」

和也「はい、すみません…って、もう~なっち」

夏美「なに」

和也「急に変なこと言うから、店員さんビックリしてたじゃん、やめな…」

夏美「早く決めるんだよ」

和也「ひっ」

夏美「いいね?」

和也「はい…すみません」

   和也、メニューと格闘する

和也「なっち」

夏美「なに」

和也「結局、なっちは何にしたの?」

夏美「なんで?」

和也「なんでってなんで?あ、これさっきも言った」

夏美「そう、自分で気づいたね~えらいね~」

   和也、頭を掻いて照れる

夏美「褒められてうれしいな~…じゃないんだよ」

和也「ねえ、そろそろ教えてくれてもいいじゃん。何を注文するのか」

夏美「卵がとろ〜りカルボナーラ、あとドリンクバー」

和也「卵がとろ〜り、いいね。俺もそれにしよーっと」

夏美「被らない為に聞いたんじゃないのかね君は~」

   和也、てへぺろ

夏美「あのさ、そーいうところだよ」

和也「ん?」

夏美「ほんと、そーいうところが…」

和也「…」

夏美「かわいいんだよ」

   和也、胸を撃ち抜かれる

夏美「はい、はやく決める」

和也「うん、卵がとろ〜りカルボナーラにする」

夏美「ドリンクバーは?」

和也「つける」

夏美「はい、呼ぶよ」

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◆シーン2 最高のスマイル

   店員、題名をめくる

   シーンのタイトルが書いてある

   夏美、呼び出しボタンを押す

夏美「あれ?今押したよね?」

和也「多分。押したようには見えたけど」

夏美「鳴らなかったよね?」

和也「どうなんだろう、注意してなかったから。まわりも騒がしいし」

夏美「押した感触はあったんだけどなぁ」

和也「もう一回押してみようか」

   ボタンを押そうとする

夏美「やめて」

和也「なんで」

夏美「シッ」

   夏美、周囲を見渡す

夏美「…リスクが高い」

和也「え?」

夏美「もし、ちゃんと押されていたのにもう一回押しちゃったりしたら…」

和也「押しちゃったりしたら?」

夏美「…めっちゃお腹減ってるみたいでしょ」

和也「減ってるよ。だから大丈夫」

夏美「はぁ?」

和也「なんなら3回押しても良いくらい減ってる」

夏美「あのね、お腹の減り具合を申告するボタンじゃないんだよ」

和也「だったら2回押しちゃっても、お腹減ってるとは思われないよ?」

夏美「確かに」

   夏美、ボタンを押す

夏美「…押したよね?」

和也「押した」

夏美「鳴らなかったよね?」

和也「これは確実に鳴らなかった」

夏美「壊れてるっぽいね」

和也「電池が無いのかも。店員さん呼ばないと」

   ボタン押す

夏美「いや、だから壊れてるって…」

   呼び出し音が鳴る

和也「あ」

夏美「え?」

和也「鳴った」

   店員が来る

店員「お呼びでしょうか?」

和也「あーいや、大丈夫です。鳴ったんで」

夏美「ちょい、ちょい、ちょい、ちょい」

店員「ちょい?」

夏美「いや、注文、注文です」

和也「あ、そうか」

夏美「カルボナーラ2つと…」

和也「(囁くように)卵がとろ〜り」

夏美「…卵がとろ〜りカルボナーラ2つと、ドリンクバー2つ。以上です」

店員「ご注文を繰り返します。卵がとろ〜りカルボナーラ2つ、ドリンクバー2つ、以上で宜しいですか?」

夏美「(和也に)いいね?」

和也「あとスマイルください」

夏美「はい、行っていいです。すみません」

   店員、戻る

夏美「おい、何だね今のは。自分の行いを大いに反省するんだよ」

和也「うん(最高のスマイル)」

夏美「あんたが最高のスマイルをしてどうする」

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◆シーン3 不手際が生み出したモンスター

※カット可能

   店員、題名をめくる

   シーンのタイトルが書いてある   

   和也、そわそわしている

和也「もう来るかな?」

夏美「来ないよ」

   間

和也「もう少しかな?」

夏美「まだまだだね」

   間

和也「あと何分くら…」

夏美「吉牛にしますーーー?」

和也「…卵がとろ〜りカルボナーラでお願いします」

夏美「じゃあ、黙って待つ」

和也「はい」

夏美「あ、そうだ。ドリンク取りにいこ」

和也「わたくしが取ってまいりましょうか、姫」

夏美「ええ、ではお願いね。姫はコーヒーを所望するわ」

和也「かしこまりまみま」

夏美「噛んでる暇があったら早く」

和也「うん」

   飲み物を取りに行く

和也「(袖から)なっちーーー」

夏美「ちょ…えー?なにー?」

和也「コーヒーだっけーー?」

夏美「うるさ…そういったでしょー?」

   夏美、他の客の目線を気にする

和也「コーヒーってのはホットのことなんだよねー?」

夏美「そ、そうだよ」

和也「なっちーー」

夏美「え、えー?なに」

和也「ミルクとガムシロは使うー?」

夏美「ガムシロ?使うわけないでしょ」

和也「あ、そうなんだ、苦いの駄目なのかと思っ…」

夏美「あ、あ、あ、砂糖は使う、使うよ」

和也「え?今要らないって言って…」

夏美「違う、ガムシロはアイスコーヒーに使うやつで、えっと…」

和也「なに?使うの?使わないの?どっちなんだか全然…あ、すみません」

夏美「店員に注意されてんじゃん」

   和也、戻ってくる

和也「良く分かんないからコーラにした」

夏美「はぁーーー?そこはせめてお茶かなんかでしょう」

和也「え?お茶だったの?」

夏美「…もういいよ。叫びすぎてのど渇いたからコーラで丁度いいかも」

和也「なんだ、コーラでいいんじゃん」

夏美「あのね、

君の不手際が生み出した結果論なんだよ、分かる?」

和也「ふふふ…僕はとんでもないモンスターを生み出してしまったようだね…」

夏美「さては反省してないね」

   和也、夏美、思わず笑う

和也「ねぇ、なっち」

夏美「なに」

和也「楽しいね」

夏美「そ、そうだね」

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◆シーン4 諸説あるらしいです

   店員、題名をめくる

   シーンのタイトルが書いてある

店員「お待たせいたしました」

   卵がとろ〜りカルボナーラを出す

和也「うわー美味そう」

店員「ご注文の品は以上でおそろ…」

和也「ではここで、かずくんクーーーーイズ」

夏美「こらこら、店員さんの台詞を最後まで言わせてやるんだよ。(店員に)ごめんなさい

ね。(和也に)もう、段取りってもんがあるんだよ?」

店員「台詞…段取り…」

夏美「あ、ああ、いいの、うん。ありがとう。以上でお揃いです」

   店員、戻る

和也「ではここで、かずくんクーーーーイズ」

夏美「うるさ…一度窘(たしな)められたとは思えないテンションでくるね」

和也「ね~え~。とりあえず食べていい?冷めちゃう~」

夏美「話は後にして早く食べようよ~…じゃないんだよ。どこいった、かずくんクイズとやらは」

和也「まぁまぁ、とりあえず食べましょう」

夏美「そうだね」

   二人、卵がとろ〜りカルボナーラを一口

和也「これうまーーーー、一口食べる?」

夏美「ほんとー?ありがとう。私の口の中もソレと同じ味よ、偶然~」

和也「はい、どーぞ(アーンする)」

夏美「ちょ…やめてよ」

   夏美、胸を撃たれる

   和也、ニヤニヤする

夏美「な、なに」

和也「かわいいなぁ、顔赤くして照れちゃっ…」

夏美「黙って食うんだよ、いいね?」

和也「はい」

   黙々と食べる

   黙々と食べる

   黙々と食べる

和也「かずくんク―――イズ」

夏美「ひっ…ビックリした」

和也「ジャジャン。なっちは今、卵がとろ〜りカルボナーラを食べてー?」

夏美「…います」

和也「いますがぁ、ではカルボナーラの語源は何でしょう」

夏美「途中で余計なことを言わされたのは何」

和也「ファイナルアンサー?」

夏美「なにも言って無いよ。えーっと、まって、何だろう。まぁ恐らくイタリア語だよね。カルボナーラの特徴は…タマゴかなやっぱり…あとはチーズだよね」

和也「ライフラインを使いますか?」

夏美「そんなものがあるの?」

和也「テレフォン、オーディエンス、ハーフ&ハーフがあります」

夏美「テレフォン…まぁ、誰かに電話できるってことだよね。オーディエンス…は絶対にダメ。一番ダメ。きっと他の客に迷惑がかかる…。ハーフ&ハーフはもはや意味不明」

和也「ファイナルファンタジー?」

夏美「…は?テレフォン、テレフォンをつかうよ。えーっと、誰にしよう。頭の良い友達なんていないし」

和也「電話が繋がらなかったとしても、テレフォンの権利は消滅します」

夏美「意外とシビアだね。…じゃあ、お母さんにする」

   電話をかける、夏美

夏美「あ、お母さん?………あ、うん、元気だよ。えっと……うん、違うの、今ね、かずくんとかずくんクイズをやっていて……いや、ちがう、ずぐだんずんぶんぐんゲームじゃなくて……てゆうか懐かしいねそれ。…違うよ、アンガールズじゃないよ、はんにゃだよ…って、そんな場合じゃない…あのね、聞いて、カルボナーラってあるじゃない?……いや、ガンバレルーヤじゃないよ、良く知ってるねお母さん、違うん…」

和也「タイムアーーーーーップ」

   和也、強制的に電話を切る

和也「お母さん、お笑いめっちゃ詳しいね」

夏美「どうも」

和也「さぁどうしますか?」

夏美「…分かんないけどアレでしょ?タマゴとチーズ…みたいなアレの、イタリア語なんじゃないの?」

和也「ファンタスティック・レインボー?」

夏美「もはや原型すらないじゃん…」

和也「ファイナルサマーバーゲン?」

夏美「おい」

和也「…」

夏美「もういいよ、ファイナルサマーバーゲン!」

   間

和也「ちょっと待って、ググる」

夏美「なにそれ」

   和也、ググる

和也「なるほど…整いました」

夏美「…で?正解は何」

和也「カルボナーラの語源は……」

夏美「…」

   間

和也「諸説あるらしいです」

夏美「さ、食べよう」

和也「食べよ~」

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◆シーン5 おにぎりをにぎる

   店員、題名をめくる  

   シーンのタイトルが書いてある

   和也、夏美、卵がとろ〜りカルボナーラを食べる

夏美「そういえば、バイトの方はどう?」

和也「それがさぁ、最近忙しくてやばめなんだよね」

夏美「そうなの?大丈夫?」

和也「週4日も入ってるからさぁ」

夏美「うそ、やばいね。週の半分以上働いてるじゃん」

和也「この俺もすっかり社畜さ」

夏美「ちゃんと休憩はもらってる?」

和也「いや全然。こっちは5時間も働かなきゃいけないのに、1時間しか休憩もらえないんだ」

夏美「うわぁ…それブラック企業ってやつだよ」

和也「だよね?1時間じゃあ何も休めないよ。…だって、ご飯は絶対食べたいじゃん?で、パズドラもやらないといけない」

夏美「スタミナが勿体ないもんね」

和也「そうそう。あと、モンストもやらないとじゃん?」

夏美「あー曜日限定クエストがあるもんね」

和也「そうなんだよ。…そうしたらさ、どう?寝る時間無くない?」

夏美「…あ、ない。うっそ…え?大丈夫?」

和也「しかもさ、休憩中はうちの店の飯を注文するだろ?」

夏美「そうだね、外に出るのも時間が勿体ないもんね…あ」

和也「気づいた?一番安いただのラーメンだとしても、950円するじゃない?」

夏美「それって…時給と変わらないじゃん」

和也「つまりは…?」

夏美「1時間、タダ働き…」

和也「その通り」

夏美「ブラック企業恐るべし…ねぇ、もう辞めなよそこ。心配だよ私」

和也「でもさ、俺、頑張るよ」

夏美「え…?」

和也「ほら、結婚したら生活費とか、必要だろ?」

夏美「かずくん…」

和也「なっち…」

夏美「ってばーーか。あのね、とりあえず就職しなさい、就職。かずくんはもう30超えてるんだよ?」

   和也、えーーーーという表情

夏美「えーーーーーじゃないんだよ。あとね、そのバイト先は物凄く真っ当。5時間の勤務で1時間の休憩?普通、普通だよ。30分でもいいくらい」

   和也、でもパズドラが…と言おうとする

夏美「でもパズドラが…じゃないんだよ、いい?お金を溜めたかったら、ゲームに課金している場合じゃないんだよ?それからね、毎日おにぎりを握っていくんだよ、そうすればご飯代が浮くからね」

和也「おにぎりを…?」

夏美「そう、おにぎりを」

和也「おにぎりを…」

夏美「にぎ…?」

和也「…る」

夏美「そう、おにぎりを?」

和也「にぎる」

2人「おにぎりを…」

夏美「にぎる」

和也「にぎる」

和也「…おにぎりを」

2人「にぎる」

和也「おにぎりを、にぎる、おにぎりをにぎる」

和也「俺は、おにぎりを、にぎる。俺は、おにぎりを、にぎる、俺はおにぎりをにぎる!」

夏美「声声声、声がでかいんだよ」

和也「なっち」

夏美「なに?」

   和也、キメ顔

和也「俺、おにぎりを、おにぎるよ」

夏美「なんかちょっと違うんだけど…でも、ありがと。結婚とか、一応考えてくれているんだ」

和也「うん…俺が何かしらで成功して、割とビックになって、良い感じの目標がアレしたら、そしたら結婚しよう」

夏美「さ、食べよう~」

和也「たべよ~」  

   終

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